スティーブ・ジョブズが愛読した禅の本、『禅マインド ビギナーズ・マインド』。
アメリカに禅を広めた鈴木俊隆が、初めて禅を学ぶアメリカ人に向けて「禅とは何か」を語った法話集『Zen Mind, Beginner’s Mind』を日本語訳した本です。
1970年代、既存のアメリカカルチャーを否定するカウンターカルチャーが隆盛だったこの時期に、鈴木俊隆が語る禅は多くの若者を熱狂させました。
その若者の一人がスティーブ・ジョブズでした。
彼は自らの伝記で、青春時代この本に多大な影響を受けたと語っています。
英語版のwikipediaによると、「この本は、西欧の中で、禅・仏教について書かれた最も人気のある本」だそうです。(参考)
世界24か国で翻訳され、多くの人に読まれたこの本。
最近座禅に興味出てきたので、手に取って読んでみました。
著者の鈴木俊隆とは
アメリカに禅を広めた曹洞宗の僧侶、鈴木俊隆。
1905年、神奈川県平塚市にある曹洞宗の寺に生まれた鈴木は、日本でいくつかの寺で住職を担った後、
1959年、55歳の時にアメリカに渡り、サンフランシスコにあるお寺の住職になります。
当時、カウンターカルチャー(既存のアメリカ文化を否定する動き)の全盛期にあったアメリカでは、禅を学びたい人が多くいました。
その状況を知った彼は、アメリカ人向けに「サンフランシスコ禅センター」を開設します。
彼は亡くなるまで、この禅センターでアメリカ人に禅・仏教の教えを説き続けました。
読みやすい平易な語り口
この本は1章7,8ページでまとめられ、全36章からなっています。
禅についての本を初めて読んだ私ですが、文章が平易で読みやすく、文章自体には難解さを感じませんでした。
しかし、理解が難しいところも。
文字通り禅問答に感じてしまうところがいくつかありました。
道元禅師は、「与えることは、執着しないこと」といわれました。つまり、なにものにも執着しない、ということは、与えることなのです。与えられるものがなんであれ、それは問題ではありません。(本書130ページ)
「なにものにも執着しないことは、与えるということ。」
・・・うーん、わかるようなわからないような。
この教えを日常生活に落とし込むのは難しい。。
呼吸をすることの重要さ
最も印象に残った章は「呼吸」の章です。
鈴木は、座禅をする時は呼吸に集中すべきだと言います。
そして、呼吸をしているとき、私たちは身体の「中の世界」と「外の世界」を出し入れする回転扉に過ぎないといいます。
今、この瞬間に生きるべきなのです。ただ、座って、息に集中する。そのとき、私たちは回転扉になります。私たちはすべきことをする。これが禅の修行です。(49ページ)
普段、頭の中でどうでもいいことをモヤモヤと考えている時は、呼吸が浅くなっていて、深く呼吸をすると、そんなモヤモヤが晴れる経験をしたことがあります。
この経験から、
シンプルに行動するためには、頭の中を空っぽにするのがいい。
頭の中を空っぽにするためには、呼吸を深くするのがいい。
と、思っていたので、
鈴木の言う「自らは呼吸を出し入れする回転扉に過ぎない」という表現は、自分の中にストンと落ちてきた気がしました。
この本を読み、改めて呼吸に注意して生活をしてみようと思いました。
今・ここ
また、鈴木は「今・ここ」にいる自分を、ありのままに受け入れる重要性を説きます。
「今、ここにいる」という気付きだけが、究極の事実なのです。座禅によって把握するのは、このポイントなのです。(72ページ)
暇なとき、スマホでいろいろなニュースを見ていると、
自分がどこか別の世界に飛び、全く知らない誰か別の他人に怒っているときがあります。
そんな時、頭の内側に薄い幕が覆っていて、目の前の現実が見えなくなっているように感じます。「今・ここ」に自分が入れていないのでしょう。
呼吸に深く注意して、「今・ここ」を感じる。
本当に当たり前のことなんですが、情報が溢れるこの時代にはなかなかできていないことなのかもしれませんね。
情報社会のこの時代には、大事な教えに感じます。
年を取ったらまた読み返したい
平易や文章でわかりやすい表現でしたが、深く理解できていない章もありました。
年を取って様々な経験を積んだ後に、また読み返してみたい。
その時には、違った気付きがまたたくさん得られるかもしれない。
そう思える、実りの多い本に感じました。
2作目も発売されています。↓