今回は前回に引き続き「学校教育法」の内、大学に関する章を見ていきます。
前回:大学職員が知っておくべき法律のキホン~学校教育法(第1章総則)~
学校教育法 第九章 大学
<大学とは>
第83条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
2 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
教育基本法の大学の役割をさらに具体的に述べています。
第2項は、「大学は社会に貢献する教育研究をすべきだ」という声が多くなったことを受け、平成19年に追加されました。
<学部>
第85条 大学には、学部を置くことを常例とする。ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。
基本的には大学には学部を置きます。
ただし学部以外でも、それが目的達成のために有益であれば認められています。
例えば、桜美林大学は「ビジネスマネジメント学群」というように「学部」とはしていません。
<修業年限>
第87条 大学の修業年限は、四年とする。
2 医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの又は獣医学を履修する課程については、その修業年限は、六年とする。
大学の学部は4年課程。
医学部・歯学部・薬学部(薬剤師になるための学科)・獣医学部は6年課程。
2006年から薬剤師は6年制となりました。
それ以降、薬学部には
- 薬剤師育成のための6年制学科
- 創薬研究を学ぶ4年制学科
を有している大学が多いです。
(例:北里大学薬学部 薬学科;6年制 生命創薬科学科;4年制)
<入学>
第90条 大学に入学することのできる者は、高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者若しくは通常の課程による12年の学校教育を修了した者又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。
中等教育学校:中高一貫校
これと同等以上の学力があると認められた者:高卒認定試験合格者
のことです。
<職員>
第92条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
事務職員を置くことは法律で決められています。
事務職員が正式名称なので、大学職員を目指される方では面接で「事務方」や「事務員」とは呼ばないようにしましょう。
<教授会>
第93条 大学に、教授会を置く。
2 教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
- 学生の入学、卒業及び課程の修了
- 学位の授与
・・・以下省略
よく耳にはするけどイメージのしにくい「教授会」。
この条文はつい最近(H27.4)改正されました。
今までは教授会の規定があいまいで学長のリーダーシップを阻害しているという指摘がありました。
その指摘を受け、改正がなされました。
教授会はあくまで学長に意見を述べる機関であり、
大学の意思決定は学長が行うことを明確化しました。(学長のリーダーシップ強化)
<大学院>
第99条 大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。
② 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。
大学院の使命が述べられています。
専門職大学院は平成15年度に創設されました。
例としては法科大学院や教職大学院などがあります。
<大学院大学>
第103条 教育研究上特別の必要がある場合においては、第八十五条の規定にかかわらず、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる。
大学院だけの大学も認められています。
「事業構想大学院大学」や「沖縄科学技術大学院大学」がその例です。
このような大学を「大学院大学」と呼んでいますが、
大学院大学という言葉は「学部を持ちつつ大学院に力をいれている大学」という意味で使われることもあります。
<卒業>
第104条 大学(短期大学を除く)は、文部科学大臣の定めるところにより、大学を卒業した者に対し学士の学位を、大学院の課程を修了した者に対し修士又は博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し文部科学大臣の定める学位を授与するものとする。
ここ最近の高等教育の現場におけるホットワード「学士力」。
卒業は簡単だといわれる日本の大学。
もっと卒業できる要件を明確化し、
「この大学のこの学部を卒業した人はこんな能力を持ってます」
ということが分かるように大学がそれぞれ基準を出すべきでは。
そういった議論から大学ごとに学士の学位を与える基準が出されるようになりました。
これを「ディプロマポリシー」といいます。
どの大学も似たり寄ったりで意味のあるものなのかちょっと疑問ではありますが、
現在ではこのような基準が各大学で設けられています。
<公開講座>
第107条 大学においては、公開講座の施設を設けることができる。
社会貢献・地域貢献として公開講座を設ける大学が増えてきています。
<点検評価>
第109条 大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。
大学は自分たちの教育研究や施設設備を自ら点検評価を行い、社会に公表する義務があります。
この報告書をみることで大学の今を知ることができます。
<情報公開>
第103条 大学は、教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するため、その教育研究活動の状況を公表するものとする。
国は大学に象牙の塔から卒業し、広く社会に開かれた存在なることを長い間求めてきました。
その考えから平成19年にこの条文が追加され、情報公開を義務付けました。
学校教育法は以上になります。
大学の責任や役割が少しずつ理解できてこれたでしょうか。
次回からは私立学校法を取り上げます。
次回:大学職員が知っておくべき法律のキホン~私立学校法(第1章総則)~
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