倒産した会社を実名で特集した『あの会社はこうして潰れた』という本が売れているそうです。
これは日経新聞の電子版で組まれていた連載を書籍化したもの。
読んでみると確かに、エドウィンや白元など誰もが知る有名会社や、老舗菓子店、有力視されたベンチャー企業、などなど様々な会社の倒産事例について知ることができる興味深い本でした。
この本で様々なケースの倒産をみていくと、不安になります。
『うちの会社は大丈夫か?』
他社の「しくじり」から学べることは多いはず。
人の振りを見て、我が振りも直したところです。
目次
この本の構成及び、取り上げられている企業は以下の通りです。
第1章 構造変化に呑まれた企業はこうなる
・スマホにとどめを刺された老舗ゲーセン「ザ・サードプラネット」
・大B反市で業績を伸ばした「京都きものプラザ」
・アベノミクスの風、中小建設会社には届かず「岩本組」
・スカイマークを怒らせた旅行会社「ロータリーエアーサービス」
・円安破綻した回転すしネタ「クリエイトワンフーズ」
・東電依存で起こった不運。ビフテキの「スエヒロ商事」
・外資傘下とブランド分裂「マルマンプロダクツ」
第2章 老舗企業のたどった末路
・4兄弟に別れて運営、ディズニーに依存しすぎた「千鳥屋」
・500年以上の歴史を持つ老舗和菓子店が破産した理由とは「駿河屋」
・百貨店業界の商習慣に沈んだ老舗婦人靴卸店「シンエイ」
・社員不正に大甘対応で信頼失った紙問屋「加賀屋」
第3章 あの上場会社はこうして潰れた
・船賃急落にのまれた国内5位の「第一中央汽船」
・再建請負人が不正会計「石山Gateway Holdings」
第4章 ベンチャー企業はどこでつまずいたか
・新電力の旗手が陥った急成長の罠「日本ロジテック」
・急成長から私的整理へ。脱毛大手の「ジン・コーポレーション」
・植物工場で生育不良。急成長ベンチャー「みらい」
・元AKB48が広告塔。アパレル企業「ricori」
・節電でヒット商品も、過剰投資に陥り沈む「ヒラカワコーポレーション」
第5章 捨てられる会社、捨てられる社長
・「ジュエリーマキ」の「三貴」。三度破綻の真相
・財テクに溺れた「金融通」社長。「エドウィン」の迷走
・ハーバード大出身社長が落ちた罠。「白元」の破綻
・時代に追い越され破綻 名楽器メーカー「ベスタクス」
・給食に異物が混入 「徳島屋」
・東大と取引のバイオ商社「レノバサイエンス」。市中金融にはまる別の顔
・回転ずしチェーン「海王コーポレーション」。回らなくなった経営
第6章 闇経済、不正、詐欺の舞台裏
・ワイン投資会社の「ヴァンネット」 ワインブームの甘い罠
・病院経営の難しさ。オプト債の「オプティファクター」
・M&Aが招いた破綻。「マッハ機器」と「ユタカ電気製作所」
・詐欺による経営破綻を守る基本動作
・コメ偽装に手を染めた「三瀧商事」
第7章 出版業界のタブーに迫る
・債権者説明会は4時間超。中堅取次「栗田出版販売」
・「芳林堂書店」 もたれ合いが共倒れ
・「こびとづかん」生んだ「長崎出版」
・ギャル雑誌「小悪魔ageha」の発売元「インフォレスト」
第8章 あなたもその倒産に巻き込まれる
・2015年問題が直撃 「千葉国際カントリークラブ」
・老人ホーム破綻の不思議 「聖母の会福祉事業団」
・名医は名経営者にあらず。病院破綻の深淵「緑生会」
(太文字は企業名。実際の目次と表現を変更した箇所があります。)
印象に残った事例
本書で最も印象に残った事例は、老舗のお菓子メーカー「駿河屋」でした。
500年以上の超老舗和菓子店「駿河屋」
日本の中堅・中小企業の中には業歴100年以上を数える老舗企業が約2万社も存在するが、その中でも500年以上の歴史をもつ駿河屋(和歌山市)は別格中の別格。千利休や豊臣秀吉も好んだと伝えられる「煉り羊羹」を生み出した和菓子の名門だ。(本書54ページより)
そんな名門中の名門企業が破産した原因は何だったのか?
それは「上場」という目先の利益にこだわり過ぎたためでした。
応仁の乱の前の1461年に創業した「駿河屋」。
駿河屋の羊羹は関西で特に支持され、贈答品の定番として現代まで高い人気を誇ったそうです。
そんな駿河屋は昭和に入り、株式会社化し東証2部上場を果たしました。
1992年には売上高が60億円を突破しています。
しかし、2004年に当時の社長が逮捕され、
2014年5月には全社員を解雇し、駿河屋は事業を停止してしまいました。
2004年、当時の社長が逮捕された原因は、増資を架空に見せかけたためです。
バブル崩壊後、売り上げが落ち、東証上場の基準のクリアが難しくなってきた駿河屋。
上場の維持だけはなんとしてもクリアしたいとこだわった当時の社長は、投資コンサルタント指示のもと、増資があったと虚偽の登記行いました。
これが原因で社長は大阪府警に逮捕されました。
社長の逮捕という事件は駿河屋の信用を大きく傷づけることに。
贈り物の定番だった駿河屋の羊羹。
しかし、社長の逮捕という傷がついてしまい、贈答用として購入する客が激減。
経営は限界を迎え、全社員を解雇する結末になってしまいました。
この事件を著者はこう読み解きます。
本質は「信用」の意味を見失ったことにある。上場維持による信用と、500年を超える「のれん」の信用。どちらがより重要で、守るべきものなのか、駿河屋は取り違えてしまった。 (本書58ページより)
上場という目先の「信用」を優先するあまり、消費者からの信用を裏切ってしまった駿河屋。
500年築き上げてきた信用も、一瞬で失ってしまうことをこの事件は教えてくれます。
日本企業の倒産についてのケーススタディ書としておすすめ
本書では、駿河屋のような事例が37ケース紹介されています。
一気に通読するよりは、寝室やトイレに置いておいて1日1事例ずつ読み進めていくスタイルがおすすめです。
日本の破綻について実際の事例を数多く知ることができるこの経営書。
他社の「しくじり」から数多くのことを学んでおきたいです。
自分の会社がそうならないために。