北海道猿払村が全国屈指の高所得村に発展した理由【ホタテ事業の歴史】

北海道にある小さな村が市町村別の平均所得ランキングでベスト3に位置していることをご存知でしょうか。その村の名は猿払村

「猿払村の奇跡」とも言わるこの村の経済発展について調べてみました。

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市区町村別一人当たりの平均所得額ランキング

総務省が毎年発表している「市町村税課税状況等の調」では、全市町村別の一人当たり平均所得ランキングを算出することができます。

2017年の全国ベスト10がこちら。

市区町村 一人あたりの課税対象所得額(万円)
東京都 港区 1,115.1
東京都 千代田区 944.5
北海道 猿払村 813.7
東京都 渋谷区 801.1
東京都 中央区 634.6
兵庫県 芦屋市 610.8
東京都 文京区 610.0
東京都 目黒区 602.0
東京都 世田谷区 545.0
神奈川県 二宮町 535.1

出典)総務省『市町村税課税状況等の調(2017年)』・・・課税対象所得、納税義務者数(所得割)より筆者作成

東京都の港区、千代田区が順当にランクインする中、3位に北海道の猿払村という村がランクイン。東京都渋谷区や兵庫県芦屋市を押さえての3位です。

昨今、猿払村は3年連続で東京都中央区や芦屋市を上回っております。

市町村別平均所得額ランキング

出典)総務省『市町村税課税状況等の調』より筆者作成

1990年の同ランキングでは130位と低位置だった猿払村。なぜ全国屈指の高所得地域になれたのでしょうか?

北海道猿払村の基本データ

場所

北海道最北端に位置し、北海道内で最大の村です。

オホーツク海に面し、地域の8割が森林におおわれた自然豊かな地域です。

人口

2,728人(2019/3/1現在)
世帯数:1,220世帯

人口減少により過疎地域に指定されています。参考

産業

猿払村の産業は漁業が主要産業です。
特にホタテの水揚げが有名で、漁獲量は日本一だそうです。(wikipedia調べ)村内には大規模なホタテ加工施設が設けられており、2017年は4万6千トンのホタテを生産しました。

2017年(平成29年)の猿払村の漁獲生産高は114億8千万円。その内、ホタテが100億7千万円を稼ぎ出しています。実に、漁獲生産高全体の88%を占めます。
猿払村の漁獲生産高
出典)『北海道水産現勢』より筆者作成
このホタテの生産によって猿払村は高所得村に変貌しました。

猿払村のホタテ事業の歴史~衰退からの復活~

戦前、猿払村はホタテやニシンの漁で潤っていました。しかし、乱獲の結果、戦後になるとホタテやニシンの姿が消えてしまいます。更に村内の炭鉱も閉鎖し、収入手段を失った村は困窮の一途をたどります。昭和40年代には他の地域から、「貧乏見たけりゃ猿払へ」と言われるほどでした。

そんな状況を打開したのが、猿払村の漁協組合でした。日本初のホタテ稚貝の大規模放流事業を計画したのです。(1971年)これは、1年間ホタテの種苗を海中で育て、5cm程の小さな貝に成長したところで海に放流。4~5年後、10cm程に成長したホタテを獲るという方法です。ホタテを「獲る」から「育てる」に方向転換をしたのです。

しかし、この放流事業には多額の資金が必要です。しかも結果が現れるのは、ホタテが成長する10年後。そんな大きなリスクが伴う事業に対して、地元の金融機関や村役場からの出資だけでなく、村の住民からも拠出金を集め事業を開始しました。まさに村の命運をかけた大規模事業だったのです。

その後、ホタテ漁は無事に成長。1990年代は50億円前後だったホタテ漁は、直近では100億円前後の生産高まで数字を伸ばすことに成功したのです。(下図参照)

猿払村の所得額とホタテ生産高の推移
出典)『マリンネット北海道データベース』及び 総務省「市町村税課税状況等の調」より筆者作成

ホタテの生産高が村民の所得に大きな影響を与えていることが推測できます。

猿払村は村一体となってホタテ大規模事業を成功させ、「貧乏村」から「高所得村」へと生まれ変わったのです。その結果、猿払村内には豪華な住宅が建ち並び、駐車場には高級車が停められた住宅が増えたそうです。通称「ホタテ御殿」と呼ばれています。(興味がある方はグーグルストリートビューで見てみてください)


以上見てきたように、猿払村は一度姿を消したホタテを自分たちの手で時間をかけて育てあげ、日本屈指の高所得村へと変身しました。
一度失った輝きを嘆くのではなく、自分たちでリスクを取ってもう一度育て上げる。
衰退に悩む地方都市にとって、猿払村は一つのモデルケースになるのではないでしょうか。

ふるさと納税は猿払村のホタテがおススメです。